モハキハのカウンタから見る景色

モハキハのカウンタのなかに立っていると、パッと見、いつも似たような景色ばかりが目に入ります。ご近所の家や建物の外観はそうそう変わりません。けれども、町の表情は実はけっこうちがうものです。

お向かいのバラが大きな花を咲かせたり、中学生の下校時間が早くなったり遅くなったり、道行くひとの格好が薄着になってきたり、道路につくる影が徐々に濃くなってきたり、ある時期は多く姿を見せていた町の猫が散歩を怠けるようになったり。暖かく、暑くなってきて、モハキハの大きなガラス戸を開けたままにするようになって、景色だけではなく声や音も店内に入ってくるようになりました。

けれども外の様子は眺めているだけで、ガラス戸越しに交わることはほとんどありません。モハキハの看板に気づいた誰かがふとお店に入ってきたところで、モハキハでの時間は動きはじめます。

今日は木よう日らしく、いろいろなお客さまが入れ替わりに見えました。お客さまそれぞれとおしゃべりをしてみると、ふしぎなことになにかが重なっていたりします。それは人間関係であったり、好きなものであったり、暮らす場所であったり、ささいな偶然であったり。

その様子をカウンタの中からおもしろく見ていました。今日のモハキハは小さなお店ながらも交差点になっていたような気がします。旅雑誌を眺めながらカレーを平らげてお帰りになった方、「アメリカンふたつね、おいしいとこちょうだい!」と上機嫌で休憩されていったお仕事中のおじさまたち、ご近所でのライヴ本番を控えておしゃべりと打ち合わせをしているミュージシャン、カウンタでおしゃべりをしてくれた女の子たち、カレーではなく餃子定食をオーダーしてくれた男の子たち。そして仕事帰りに缶ビール片手に「よっ」とやって来てくださったキュートなご夫婦。

すこし湿度の高い夜。木よう日恒例の居酒屋モハキハでは、「鶏皮と茄子の南蛮漬け」「新じゃがのポテトサラダ」「野菜いろいろ餃子」などをお出ししました。ビールがおいしいのはもちろん、焼酎のロックも進む夜となりました。