森彦さんのコーヒーのこと

コーヒーやカフェ特集の雑誌をながめていると、いろいろな町の焙煎士さんや豆屋さんが紹介されています。みなさんに共通しているのは、強いこだわりを持っていること。豆のセレクトや焙煎方法についてはもちろんこと、「この土地で」というこだわりでお店を開いている方が多いように感じます。コーヒー豆そのものは地産ものではないのに、焙煎される過程で、その土地ならではのものになっている、だからこそ旅先で知るコーヒーの味は強く記憶に残り、また訪れたいという思いになるのでしょう。

さて、モハキハでご紹介しているコーヒーのひとつに、札幌の「森彦」さんの「Morihikoブレンド」があります。森彦は、札幌の町の西のほう、円山という土地にあります。北海道神宮をぐるりと囲む大きな杜のそばにある、小さな木造民家を改築したお店。札幌を訪れようと思っているコーヒー好きな旅行者なら、一度は聴いたことがある名前かもしれません。また、二号店の「アトリエモリヒコ」は、雪まつりの会場で有名な大通公園のそば、路面電車が走る通りに面したところにあります。こちらは白壁と高い天井、大きく活けられた草木が印象的な明るいお店。両方とも、センスの良さとこだわりの強さを感じさせるすてきなお店です。

森彦の「Morihikoブレンド」は、実は二種類あります。

No.1と番号がふられた「フレンチ」はコクと甘みが特徴の深煎り。アトリエモリヒコで初めてフレンチを飲んだときにはびっくりしました。ひとくち目に感じたのは苦味。深煎りなのだから当然です。が、ふたくち、みくちと飲んでいくと、苦味がコクになって残っていきました。じっくりと長い時間をかけて知るおいしさ。コーヒーの温度が下がっていっても、そのコクはいやな苦味にかわることなく、一杯のコーヒーでのんびりとした時間をすごすことを許してくれました。

No.2の「マイルド」はやさしい風味の中煎り。同じく店名を冠したブレンドですが、フレンチとはまったくちがう味わいです。苦味にも酸味にも傾くことなく、何杯でも飲めてしまいそうな、文字どおりにマイルド。ストレートでコーヒーを飲むのはちょっと苦手でついカフェオレを頼んでしまう、という方でも、気負うことなくするするっと飲むことができそうな軽さです。

都会の表情をもちながらも、広い空と豊かな緑を誇る北国の町。冬には厳しい雪を、夏にはさわやかな涼風をまとう、札幌。モハキハ店主の故郷ではあるけれど、えこひいきは抜きにして、ほんとうにすてきな町なのです。その札幌からのおいしいコーヒー、「Morihikoブレンド」をその日の気分でぜひどうぞ。