二三味さんのコーヒーのこと

週末に冷たい雨が降り、すこし春が遠のいたような今朝。薄着になったとたんに寒さを引き戻す、そんないじわるも3月ならでは。週末は用事があって名古屋にいたのですが、ざんねんながら雨の室内にとじこめられていました。頭のなかでは4月の奈良や6月の北海道への旅ごころをあたためていたのだけど。北国の残雪も、春の芽吹きも、勇み足の南国も、あちこちでたくさんの景色が手招きしています。

さて、本日「旅みやげのコーヒー」に、能登珠洲にある二三味さんのお豆が入りました。深煎りの「二三味ブレンド」です。さっそく朝から豆をひいて飲んでみました。寝ぼけたあたまを起こす苦味と香り。深煎りならではの強さをもちつつも、どこかしなやかで穏やかな味わいを感じるのは海辺の古い舟小屋で焙煎をしている二三味さんの姿を想像してしまうからでしょうか。

「二三味珈琲 shop舟小屋」は、能登半島の先っぽ、珠洲の木の浦という海辺にあります。昨年、北陸を旅していたときに、金沢にあるブックカフェ「あうん堂」さんを訪れて二三味ブレンドをいただきました。あうん堂の店主本多さんから「珠洲の舟小屋で二三味さんという女性が黙々と焙煎しているんですよ、ほんとうですよ」と聞き、興味をもったわたしは、能登を旅するルートを予定よりものばして木の浦の海を訪れました。5月にしては肌寒い、霧雨がまとわりつく日でした。くもり空の下、ほかに誰もいない海辺を歩いていると、ふとコーヒーの香りがしたのです。

「二三味珈琲 shop舟小屋」を訪れたときの旅日記
【ミスハタリの冒険と計算「新版ミスハタリの北陸旅 4 海と絶壁と二三味珈琲」】

今朝、能登から届いた封筒をあけると、コーヒーの強い香りが立ち上りました。わたしにとっては誰もいない静かな入江、ほとんど波が立っていなかったあの海辺の記憶。訪れたことのあるひとならそれぞれに景色が浮かぶ、訪れたことがなくてもきっと想像してしまうあの海。そこにたしかにある「ある景色」へといざなう、香り高いコーヒーです。


「一杯のコーヒーで いつでもこの場所に 帰ってこられますように」

大阪で能登を思う。
旅みやげのコーヒー、「二三味ブレンド」をどうぞ。