金沢からの旅人

あたたかく、気もちのよい天気の月よう日。屋上でシーツを二枚干してからモハキハに出勤。タカコさんの手織り教室、一周年記念に咲いた胡蝶蘭がきれいでこころが華やぎます(昨年のオープニングでお祝いにいただいた鉢を和歌山で株分けして、この春にまた咲かせたそうです)。

お昼すぎにいらしたお客さま。「金沢から来たんです、わたし、『あうん堂』で座頭市を観ていて」。ほかにお客さまがいらっしゃらなかった時間帯だったので、カウンタに座っていただいてゆっくりおしゃべりができました。金沢でやきものを作っている若き作家さんでした。金沢から東京を回り、大阪から今度は船で鹿児島へ渡るそうです。朝に大阪に着いて、船待ちの時間にモハキハを訪れてくださいました。

「あうん堂」さんは金沢のひがし茶屋街近くにあるブックカフェです。古本店主ほんださんとカフェママのけいこさんというすてきなご夫婦がお店を開いています。モハキハ店主は東京で暮らしていた数年前に、「大糸線」という路線に乗りたくてそのついでに北陸を目指し、金沢でたまたま知った「あうん堂」さん(そのとき金沢21世紀美術館で町家にちなんだインスタレーションをしていて、そこで「あうん堂」さんが紹介されていた)を訪れたことがありました。そのとき、自家製のジンジャーエールをいただきながら、宮脇俊三さんの『終着駅は始発駅』という本を読んでいたところ、ほんださんが「あ、鉄道好きなひとですね」と話しかけてくださったことが出会いのきっかけでした(→☆ そのときの旅日記 2007/09/02)。

あうん堂】 http://www.aun-do.info/

それから三年後、また金沢を訪れる旅の機会があり(やっぱりこのときも「大糸線」に乗りにいきました)、あうん堂さんにとてもお世話になり、たくさんのおしゃべりをして、こちらで能登の二三味珈琲のことも知りました(→☆ そのときの旅日記 2009/05/05)。モハキハ店主が本業である編集をした『座頭市映画手帖 petit』というミニブックがあるのですが、それを扱ってくださることになり、そこからほんださんが「月に一度、座頭市上映会をやろうとおもいます」とご連絡をくださり、その後毎月11日(「The 十一」=座頭市)に順番に勝新太郎座頭市映画を上映しているそうです。先日、あうん堂さんが開店七年目を迎えたというお知らせのハガキをいただきました。ああ、また金沢に行きたくなってきました。

そのあうん堂さんで開かれている上映会の常連でもある、かわいいお客さま。「座頭市が…」「勝新が…」と、昼下がりのモハキハでしばし映画談義。そこから旅の話になりました。「わたし、船が好きなんです、だから船に乗りたいと思ってこの旅を決めました。鹿児島では…桜島? どこに行こうかはまだなにも考えていないんです。とにかく船に乗りたくて」。「学生時代に上海へ船で行ったことがあったんです、じょじょに町が近づいてくるワクワクしたかんじがとても良くて。飛行機は便利だけど、あまりにあっけないから」。わかります、わかります。「あれに乗りたい」という気もちから生まれる旅ごころ。なんだか、とてもすてきな思いつきだと思います。モハキハはそういう旅が大すきです。どうぞよい旅を。またこんど、旅みやげのお話を聞かせてくださいね。